
本年数え98歳にしてなお矍鑠として現在、創元会会員。西湘美術協会会員。そして幼児画の指導にもあたられご活躍中でいらっしゃる。
私が夫君である故井上三綱先生に最初にお目にかかったのは1956年(昭和31)秋、萩の生い茂る長興山のアトリエをお訪ねした折であった。奥さまである正子先生に拝顔叶ったのはずっと後年になる。
何故なら、かたや入生田・長興山、かたや酒匂の里と約4キロメートルを隔て、それぞれ創作に没頭されていたからである。
私事で恐縮だが我が子の様に目をかけて戴き「筆舌に尽くしがたい」と言う言葉があるが、まさに尽くしがたい多くのものを学ばせて戴き、又多くのかけがえのない「おかげ」を頂戴して私の現在があると言っても過言ではない。
我が儘放題を申し上げる様になった揚げ句、あまり好まれなかったであろう仲人役まで快く引き受けて下さり、三綱・正子両先生ご夫妻にご媒酌の労をお執り戴いたこともありがたいことである。
又、私の住する三寶寺の梵鐘「黄鐘の鐘」の制作の際には三綱先生とのお約束の作品「黄鐘調」と先生の遺髪が鋳込まれ完成した。
母親が低い声で子守歌を唄いながら赤ん坊を寝かしつけるあの音程(129ヘルツ)を黄鐘調と言い、その調べは永遠に殷々と響き続けることであろう。
ご恩返しはとても出来ないが、正子先生から個展のお話をお伺いした折、無理を申し上げ三綱先生の祥月命日を挟んだ会期でお願いした次第、この期に実現出来たことも「おかげおかげ」である。
因みに、井上家の代々は神道であるがご縁(佛縁)により法名「暁瞬院独譽時空三綱居士位」を授与せて戴いのは昭和56年5月19日のこと、享年82歳であった。
「98井上正子の世界」展にあたり、ご縁・出会いの不思議の一端を披露させて戴いた。
佛説阿弥陀経典の「青色青光・黄色黄光・赤色赤光・白色白光」の如く、1998年の現在、その画境は白色白光の光芒を放ち、そこに至彼岸、静かな安息の浄土を観る。
ご健勝にて益々画道を極められんことを祈念。
花御堂主
尚、レセプションは5月21日(木曜日)午後6時より「ギャラリー花御堂」で開催されます。参加希望される方はお手数ですがお申し込み下さい。